
起き抜けにカーテンを開けば、また新しい今日が始まる。
彼女の住むこの陽のあたる小さなワンルームには、広さの割に少し大きめなベッドと、幼少時代から使っているという年季の入った小さめの勉強机、ローテーブル、テレビのほか、目立つ家具は何ひとつない。
これまで「モノ」にあまりこだわってこなかったという彼女は、最近、少しずつ家具やインテリアの入れ替えを行っているという。
“ o r d i n a r y ” 最初の取材を受け入れてくださったのは、「田中 青紗(たなか あさ)」さん。
今回は、ライター・作家である彼女の一日に密着した。
朝ごはんが朝時間を “特別” に変えてくれる
カーテンを開け、たっぷりと水を入れたケトルでお湯を沸かし、白湯を作る。
少しずつ口に運びながら、先ほどまで眠っていた体を起こし、身支度を整える。
着替えまで完了したら、あとは彼女の大好きな朝食の時間が待っている。
「朝ごはんが好きになったのは、社会人として働き出してしばらくたってからです。」
「当時は毎日仕事が忙しくて、なかなか自分の時間が持てておらずモヤモヤしていました。ちょうどそのとき朝ごはん好きな友達に出会って、一緒に朝ごはんを食べるようになったんです。」
「都内のモーニング巡りをするようになってから、『あ、そういえば私、朝の時間が好きだったな』とか、『朝ごはんが好きだったな』と思うようになって。自分の好きなことや、やりたいことが思い出せるようになったと同時に、ゆっくりと過ごす朝時間のおかげで次第に毎日が楽しくなりました」
朝ごはんは、朝の時間を特別なものにしてくれる、ちょっとしたエッセンスだ。
「朝ごはんをしっかり食べると、一日を頑張ろうと思えるし、自分のことも好きになれると思います」
子どもの頃から使ってきた小さな机で執筆の時間
子どもの頃から実家で使っていた小さな木製の机が、今の彼女にとってのオフィスだ。
長時間の作業でもできるだけ疲れないよう、パソコンスタンドは必需品。日によってはオンラインミーティングやインタビューなどもここでこなす。
仕事内容は多様で、ライターとして記事を執筆することもあれば、作家として小説やエッセイを書くことも。時にはインタビューした音源を聞きながら書き起こす「テープ起こし」を行うこともある。
また去年までは、メディアプラットフォーム「note」上で、エッセイや小説を約2年間毎日欠かさず投稿。約1900人のフォロワーを持つ人気クリエイターだ。
昼食時は録り溜めたドラマを見ながら簡単に
昼食時には、ローテーブルに移動して簡単にランチを。
この日の昼食は、好みの具を入れたおにぎりが2つ。
普段からテレビでドラマを見るのが日課だという青紗さん。あまり家具や家電の置かれていない部屋の中でも、テレビと録画機材は欠かせない。録り溜めしておいたものを、手の空いた時間にまとめ見するのが日々のルーティーンだという。
この日も、昼食を食べながら録画したドラマを少しの間眺める。
お茶の時間も、大切にしている儀式
「実家に住んでいた頃、学校が終わって家に帰ると毎日お茶の時間がありました。家族と集まってお茶やお菓子を食べながら、その日あったことや考えていることを話していたんです」
そう語る青紗さんは、うれしそうに、こだわりの茶葉やお菓子について教えてくれた。
午後の仕事をしっかりとこなした後は、お茶の時間が欠かせない。
季節や気分に合わせてその日のお菓子を、そしてお菓子に合わせてお茶やコーヒーを選ぶ。
じっくりと時間をかけてお茶を淹れて、ゆっくりと楽しむ。
ほんの少しの時間しか確保できない忙しい日でも、お茶の時間を欠かさないという彼女。彼女にとってそれは、一種の儀式のようなものなのかもしれない。
この日は、よく足を運ぶパティスリーで買った林檎のタルトとシナモンティーを。
スマホでしっかりと写真を撮って、インスタグラムの更新も忘れない。
小説執筆のための取材や下見は自分の足で
検索すればいくらでも情報が出てくるこの時代においても、彼女はできるかぎり自分の足で取材や下見に訪れる。
現在noteで連載中のシリーズ小説「今夜、ご自愛させていただきます」の執筆のため、都内にあるプラネタリウム「コスモプラネタリウム渋谷」を訪れた青紗さん。
上映が終わるとすぐに小さなメモを取り出し、何やら文章を書き止める。
感じたことや考えたことで作品に使えるものは、その場ですぐにメモしておくという青紗さん。青紗さんの創作作品に登場する場所や名前、歴史などのあらゆる情報は、ほとんどが事実に基づいている。
必要であれば電車の時刻表やカフェのメニュー表も確認し、小さな矛盾も作品の中に入れ込まないのが彼女のこだわりだ。
一日の締めくくりは晩酌タイム
取材から帰ると、冷蔵庫から作り置きのおつまみをお皿に盛って、晩酌タイム。
この日のメニューは、水菜のサラダ、パプリカのピクルス、鶏ハム、煮卵。たっぷりのロックアイスで作るハイボールで楽しむ。
キッチンには、昨年仕込んだという梅酒のボトルも。お酒をたしなむ時間も、朝ごはんやお茶の時間と同じように彼女にとって大切な時間なのかもしれない。
読書時間のお供はミルクパンで煮出すルイボスミルクティー
お風呂に入ってさっぱりした後は、彼女の趣味でもある読書の時間。
小さなミルクパンでルイボスミルクティーを煮出す。
夜の時間はカフェインを控え、ゆっくりと眠れる温かいドリンクを準備することが多いという。読みかけの本を開いて、お茶を飲みながら時間をかけて読書をする。
都会の片隅の、小さなワンルームからはじまる物語
読書に少し疲れてきたら、次は創作の時間だ。
日によってローテーブルやデスクで、時にはベッドの上で作品を書き上げる。
ノートパソコンをカタカタと鳴らし、思いのままに表現する。作品作りは楽しいことばかりではないが、自分が感じたことや伝えたいことを言語化できる喜びは格別だ。
きりのいいところまで書いたら、就寝の時間。
田中青紗さんの一日は、都会の片隅の、この小さなワンルームではじまり、終わっていく。
今日も一日、おつかれさま。
動画内で登場したものたち
◆ ケトル(mosh! モッシュ 電気ケトル M-EK1 ):
◆ ティーポット(LONDON POTTERY ティーポット 2カップ 600ml レッド):
◆ 使用した紅茶(ルピシア オレンジ ポマンダー):
◆ マグカップ(KINTO (キントー) CLK-151 スモールマグ 300ml ホワイト):
◆ 天井照明(IKEA SOLKLINT ソルクリント):
◆ スタンドライト(IKEA HUDENE フーデネ):
◆ カーテン(unico):
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《田中青紗さんのプロフィール》
田中青紗(たなか あさ) 大学卒業後、テレビ番組制作会社での勤務を経てフリーライター/作家へ。 主にインタビュー・取材記事・エッセイ・小説を執筆。 過去に「マイナビ学生の窓口」にて短編小説を掲載。noteにて『今夜、ご自愛させていただきます。』を連載中。 お仕事のご依頼はこちらから。