あなたの職業病は愛おしい

シリーズ『編集長キコの Enjoy! Work Life』は、クリエイターでありordinary編集長のキコがお仕事のあれこれを語るエッセイ。
月2回更新予定。

私は他人の 職業病* を聞くのが大好きだ。病状を通して、いろんな仕事のこと、その人の仕事のスタイルがなんとなく想像できて、にんまりできるからだ。

* ここで言う「職業病」は、業務上疾病、職業性疾病ではなく文脈通り「仕事をしてるからこそこんなことが気になっちゃった」というレベルのお話です。

もちろん私にも職業病はある。例えば今は一日のほとんどを編集者として過ごしているので、文面の“ねじれ”や、“てにをは”(「は」「を」「が」「も」「に」など、語句と語句との関係性を示したり文章に意味を加えたりする言葉)の誤用が無性に気になったりする。

そうそう。昨日は「〇〇に⬜︎⬜︎が売っていました!」なんて文章に発狂するなどして。

あああ。「〇〇に⬜︎⬜︎が売っていました!売られていました!」

それから、尖った言い回しや語彙に出会うとつい脳内で例文を考えてしまったりも。これは文章に携わる人だけじゃなく表現者にもよくある職業病かも。

さて、コラム第2回目にしてネタ切れという困難にぶち当たった私は、なんとかひねくり出したこの「職業病」というネタを膨らませるべく、周りの人たちが一体どんな職業病を患っているのか軽く調査してみたので書き出してみようと思う。

まず、最近引っ越しをした時に業者に聞いた職業病は、「友達の家に行った時、家の中の荷物がダンボール何箱分で、トラック何台必要かすぐにわかってしまう」とのこと。なんともメリットの少ない職業病だ。

デザイナーの友人は、「人が作った資料のフォントのブレや画像配置のズレがピクセル単位で気になって、内容が全く頭に入ってこない」と言っていた。私もたまに同じことが起きるが、これが常にだと考えるとなかなか深刻な病状だ。

財務部OLは「レシートを見ると脳内で勘定科目に仕分ける」そうだ。これはかなり優秀な職業病。私の税金まわりもお頼み申したいくらい。

テレビ業界の知人は「なんでも略語を作る」んだそうだ。確かに彼らは、人の名前まで勝手に略して話す人が多い気がする……。そもそもそれってテレビの仕事となんの関係があるんだ、というツッコミはさておき。

最後のひとつははたして職業病なのか疑わしいものではあったのだが、なるほどと納得する症状ばかり。

仕事時間は人生の25〜30%ほどに当たるそうだから、「そりゃそうか」案件ではあるのだが、こんな風に人の職業病を見ていると、その人がひたむきに仕事に向き合っている姿を想像してなんだか和む。「ああ、この人も仕事人なんだな」と。

もちろん、私は決して「仕事人至上主義者」ではない。仕事をしなければいけないわけではないし、仕事が好きでなければいけないわけでもない。でも、日常生活の中にふと顔を出してしまうくらい癖づいてしまうなんて。こんなに愛おしいことはないじゃないか。

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